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守江湾干潟のアサリと潮干狩りの禁止について

更新日:2023年05月09日

守江湾干潟のアサリの現状

守江湾干潟の生き物について

 杵築市は別府湾の北東部に位置しており、市の地先には守江湾と呼ばれる入り江があります。この守江湾には広大な干潟が広がっており、アサリやカキ、ハマグリなど漁獲対象種となっている生き物から、アオギスやカブトガニのように絶滅危惧種として保護の対象となっている生き物まで、多様な生物が生息しています。

守江湾干潟での潮干狩りの禁止について

かつての潮干狩りの様子

干潟に出て潮干狩りを楽しむ人々

 守江湾干潟には平成23年頃まで大量のアサリが生息していました。

このため、毎年春頃には潮干狩りを楽しむ人で干潟が埋め尽くされる程でした。

アサリ資源の減少と潮干狩りの禁止

杵築市のアサリ漁獲量の推移

 かつては大量にアサリが獲れていた守江湾干潟ですが、平成24年7月の豪雨災害以降アサリの漁獲量は激減し、現在では漁獲サイズのアサリはほとんど見られなくなってしまいました。

 この様な状況から、守江湾干潟での一般のお客様による潮干狩りは、平成27年から原則禁止とさせていただいております。

アサリの資原が回復しない原因について

 アサリの資原量が平成24年の豪雨災害で激減して以降、回復しない原因としては、様々な説がありますが、現段階では下記の2つが主な要因であると考えています。

アサリ稚貝の発生量の低下

6月頃のアサリ稚貝の密度分布

左の図は、平成29年以降、守江湾干潟において毎年6月頃に殻長5mm前後のアサリ稚貝の分布を調査した結果を示したもので、赤い円が大きいほどアサリ稚貝の密度が高い事を示しています。

平成29年には守江湾のほとんどの定点でアサリ稚貝が確認されていましたが、平成30年以降はアサリ稚貝の発生量が減少していることが、見て取れます。

このように、アサリ稚貝の発生量が減少していることが、アサリが増えない一因であると考えられます。

アサリ稚貝の発生量が減少した原因については、推測するしかありませんが、前述の平成24年7月豪雨により守江湾に生息していたアサリの母貝が激減してしまったことが関係していると考えています。

食害による減耗

アサリの食害の調査

左は守江湾の干潟でアサリの食害状況を調査した際の写真です。

干潟に殻長3センチメートル程度のアサリ138個を放流し、定点カメラで観察を行いました。

設置から4日後に回収したところ、回収されたのはアサリ7個のみでした。

設置していた定点カメラにはクロダイが海底をしきりについばむ様子とアサリをくわえる様子が記録されていました。(下写真)

守江湾には、クロダイ以外にもナルトビエイやアカエイなどのアサリを捕食する生物の生息が確認されているため、たとえ多少のアサリ稚貝が発生したとしても、これらの捕食者に食べられてしまうことが、アサリが増えない一因であると考えられます。

海底をついばむクロダイ

アサリをくわえるクロダイ

アサリの資源回復の取組

杵築市では、アサリを対象とした漁業や、一般のお客様による潮干狩りの部分的な復活を目標として、アサリの資源回復に取り組んでいます。

ここでは、これまでの取組について簡単にご紹介させていただきます。

アサリの資源回復の考え方

守江湾のアサリ資原は前述のとおり、平成24年の豪雨災害で激減し、その後、稚貝発生量の低下や食害などの要因によって、以前のような水準に回復できない状態と考えられます。

このため杵築市では、稚貝の発生量を左右すると考えられる、アサリの「母貝」を守江湾の中で人為的に増やすことで、アサリ資源の回復に取り組んでいます。

アサリ母貝の量産手法

現在の守江湾では、食害などから人の手で保護しなければ、アサリの母貝を増やすことは出来ません。

杵築市では大分県の水産試験場や漁協・漁業者の協力の下、主に次の方法でアサリを保護し、母貝を増やす取組を行っています。

被覆網

目合い9mmの網を干潟に張り、アサリを保護する施設です。(写真左下)

被覆網の下にアサリの稚貝を放流することで、波による逸散や食害から保護され、母貝まで成長します。

右下の写真は、被覆網にアサリの人工種苗を放流した際の写真です。

網袋

目合い5mm程度の網袋に砂利を詰めた施設です。(写真)

網目から天然発生したアサリの稚貝が入り込み、食害などから保護されることで母貝まで成長します。

アサリ生産施設の維持管理

被覆網や網袋などのアサリを保護する施設を干潟に設置すると、「大雨や波浪による砂泥の堆積」や「カキ等の付着生物の着生」など、アサリの成長の妨げとなったり、アサリが死に至る様な現象が発生します。

また、設置から2~3年が経過した場所ではアサリの生息密度が過剰に高まり、「餌の競合」、「排泄物などによる底質環境の悪化」、「入れ替わりが少ないことによる底質の還元化」など、アサリの成育に悪影響を及ぼすと考えられる状態も見受けられます。

これらに対処するために、「日常的な見回り」や「定期的な網の交換」、「アサリの間引きや底質の耕耘」など年間を通した維持管理が必要となっており、管理手法の簡便化やコストの削減などが課題となっています。

アサリ母貝の生産状況

アサリ保護施設内の現存量の推移

前述の手法によるアサリ母貝の生産は平成29年から体系的に実施されており、その生産状況については定期的に現存量の調査を行っています。

守江湾干潟に設置された施設におけるアサリ母貝の現存量は、施設の設置数やアサリ種苗の放流数の増加、アサリの成長などと共に徐々に増加しており、直近の調査時点(令和5年1月から2月)で、推計22.2トンとなっています。

アサリの資源回復に向けた今後の課題

アサリ母貝の現存量は増加している一方で、前述のとおりアサリの稚貝発生量は増えているとは言いがたい状況となっています。

今後は、生産されたアサリ母貝による産卵量の増加・資源回復という目標を維持したうえで、アサリ母貝の直接的な利用方法を模索することが課題となります。

具体的には、環境学習・体験学習の場として利用しながら、資源の回復に向けた取組を持続可能な形で継続する道筋を検討できればと考えています。

この記事に関するお問い合わせ先

農林水産課 水産係

〒873-0001 大分県杵築市大字杵築377番地1
電話番号:0978-62-1809
ファックス:0978-66-1033
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